パシアテと呼ばれる先史の超文明が、竜族との最終戦争により滅んでから約一万年が過ぎた後の世界。
後発の人類文明が、先史文明から受けついた超科学の残滓「Eテクノロジー」を糧に、多くの綻びを残しつつもフルクラム帝国による世界統一を成し遂げるに至った時代。
舞台は世界帝国フルクラムの帝都。Eテクノロジーの力で繁栄する大都市。
人々は残された過去の遺産を足がかりに、さらなる発展を手に入れようと努力していた。
だが、その過去の遺産を悪用しようとする者がいる。
先史パシアテの遺産である巨大機動兵を犯罪に利用し、人々を支配せんとする者達……
Eテクノロジーによって生み出された悪意を持った「道具」が人々の生活を脅かしつつあった。
カル・ルスランは、普段は帝国ジュニア・アカデミーに通う一学生。だが彼女は、パシアテ文明保存管理局、通称“ライブラリ”と呼ばれる政府機関所属のエージェントでもある。
先史の亡霊を倒すことのできる唯一の存在が、彼女が操る超重機動兵「アルパー」。
旧時代のテクノロジーの産物が帝都に危害を与える時──
カルはアルパーを駈り、それに立ち向かうのだ。
フルクラム帝国が幕を開け、同帝国が幕を降ろした三十年近くにも及んだ未曾有の戦乱、大陸統一戦争の終結から十五年。戦後の新時代は、大きな変化の時代だった。
Eテクノロジーによって底上げされた、産業・製造面での進歩が、輸送・商業・法律をはじめとする日常生活のあらゆる面を変え、また急速なこの進歩にともなって、社会には覆いきれない矛盾と逆説が生まれてもいた。
帝国およびそのEテクノロジーの恩恵にあずかる周辺国の市民は、進歩というものをおおむね受け入れていた反面、それらの発展から取り残された人々は、昔ながらの社会の価値観をそれまでにも増して頑固に守りつつ、大いなる不満と羨望をもって帝国の繁栄を──その象徴たる帝都の華やかな姿を眺めていたのである。
世界中の富と才能が帝都に集まる一方、それと相反する〝支配による歪み〟も、彼の地に集まろうとしていた。……
主人公たちの活躍するこの時代より、ずっと昔に繁栄を極め、今より遥かに高い技術力を持っていた超高度文明。
独自の文化を築き、超物質精製法や反重力を特徴とする優れた科学文明を誇っていたが、約一万数千年前、絶頂を誇った科学文明は突如として地上から消えうせてしまう。今持ってその原因は謎につつまれ、パシアテ文明の全貌を知ることは出来ていない。だが一部の機構は、大規模パシアテ文明遺跡──通称「Eプラント」として後世に遺された。全くメンテナンスを受けていなかったにも関わらず、遺跡の機能が現在までほとんど損なわれることなく保全されているところなど、その技術力は驚異の極み。
超科学文明『パシアテ』が残した遺跡群の総称。その規模は小さな古墳レベルのものから、都市レベルの巨大なものまでさまざま。
Eプラントは世界中のいたるところに残されており、帝都の地下一帯に広がるEプラントは、現在発見されているものの内でもっとも大規模なもののひとつ。
この世界の大都市の多くは地下Eプラントの上に建設されており、稼動可能なEプラントからエネルギーを採取(またはEプラントを構成する特殊建材の採集、Eテクノロジーを用いた発掘部品を採集……等々)することで、都市機能を維持している。
Eプラントは、オーバーテクノロジーの宝庫であり、今現在もほとんどが未探索のまま。人類が利用できている部分はほんのわずかにすぎない。
パシアテ文明がらみの先史超科学技術の俗称。
パシアテ文明の遺跡(Eプラント)や発掘品の多くに共通して刻まれていた紋章のビジュアルイメージが「E」の字に見えることから、それら遺物を解析して得られた超技術を“Eテクノロジー”、遺跡の名を〝Eプラント〟と呼ぶようになった。
Eの頭文字をとって「ELEMENTARY TECHNOLOGY」ともいったりするが、これはあくまでもゴロあわせの後づけ。Eテクノロジーと区別するために、通常水準技術をN(ノーマル)・テクノロジーと言ったりもする。
Eテクノロジーは、体系化されてからまだ日が浅く、全般に高コスト。そのため帝都のような先進地域を除いて、一般への普及はなかなか進んでいないのが実情。
パシアテ文明保存管理局が正式名称であるが、世間的には〝ライブラリ〟との通称の方が一般的。
皇帝直属の組織であり、政府内に隠然たる影響力を持つ。
組織の発足時からの第一の目的は、かつてこの星を支配していた先史の超文明パシアテの遺産であるEテクノロジーを管理、保管することである。〝ライブラリ〟との通称も、そのことによる。
だがここ数年の中心業務は、違法Eテクを用いた異常犯罪など、帝国市民に与える影響の大きな犯罪の捜査、帝国の許可の無い高度Eテクノロジーの研究開発や、それが用いられようとした際、保有する実行部隊をもっての取り締まりなど。
活動範囲は、あくまで「高度Eテクノロジーに関連したもの」に限られているが、高度Eテクを用いたテロリズムの抑止・検挙などのカウンターテロ、それに伴う警備又は要人警護も担当するなど、実質的には総合的な防諜機関ともいえる。
多目的万能結晶。その組成や生産方法など、ほとんどが謎につつまれている物質。
先史パシアテ文明における超技術文明の基礎となっていたと言われている。
現在はEプラント等から稀に発掘される以外にしか入手方法が無い。高純度のものはさらに稀少価値が高いため、市場に出たときは法外な値で取り引きされる。
そのため冒険者や研究家のみならず、国家でもが製造法を捜し求めている。
作品中に登場する機動兵(戦闘ゴーレム)などの先史文明の超技術を用いたものの、ほぼ全てが、このオリハルコンの操作技術に基礎を置いている。
Eテクノロジーを使用した戦闘兵器の総称。
代表的なものは、「ドグラノフ」の名で呼ばれる硝酸塩燃料を燃焼させ、そのガス圧で筒などをガイドに重金属弾を発射する熱機関武器や、機動兵(戦闘ゴーレム)と呼ばれる人型兵器など。
現在の世界を実質的に支配している帝政国家。
元は、大陸の片隅の小国だったが、パシアテ文明の遺産を解析することによって、Eウェポンを大量に造り出すことに成功──。その力は圧倒的で、わずか数十年で世界の実質的な統一をなしえた。現在の皇帝はエグザシオ。帝都を中心に、軍事、経済の両面で世界のリーダーシップをとる。その覇権に反目する国や組織も多い。
フルクラム帝国が、世界の将来を担う人材を選抜、育成するために設立した教育と学問研究のハイブリッド機関。
帝国が、国家の威信をかけて設立した学校であり、人材・設備、あらゆる面で超一級の環境を誇っている。
ジュニアアカデミーの定員は、年によって増減するが、だいたい三千名前後。一年生から六年生までの学年にわかれ、基本的に成人前の生徒を対象に構成されている。
定められた試験さえパスすれば、入学はだれでも自由。学費も激安。そのため世界中から、ありとあらゆる人材が集まってきている。
しかしその自由すぎる学風から引き起こされるトラブルも多い。
ジュニアアカデミーの制服は、エッジのたった襟と、そのふちに沿って走る幾何学的なストライプが特徴のセーラ服タイプ。女子生徒はワンピースにタブリエをかぶせて、シンプルな構成の中に一種独特の見た目を作り上げている。その反面、男子生徒の制服はやや可愛すぎるという意見が多く、そのせいで上級生になると制服を着てこなくなる男子生徒もかなりいる。
規定の範囲内であれば各生徒の好みに応じ、色やデザイン等、制服をカスタム化することも許されている。