戦闘画面で,パワーローダー各機の右上に示された数字がAP(アクションポイント)
「パワードール」シリーズは戦術級ゲームにふさわしく,行動ポイント制を採用している。これは,1ターンという限られた時間の間にかけられる労力と時間を,数字で表したものだ。「パワードール」シリーズでは移動するにも射撃するにも,何をするにもAP(アクションポイント)を消費し,それを使い切ったらそのターンにはもう行動できない。また,時間と手間のかかる行動ではより多くのAPを消費する。同じ歩くのでも,ただ目的地にまっすぐ向かうのと,絶えず周囲を警戒しながら進むのでは,かかる時間と手間が違って当然だ。同じように,漫然と敵を撃つのと,しっかり狙い定めて撃つのでは,命中率だけでなくAP消費も違ってくる。
これが,「パワードール」シリーズ全作品に独特の緊張感とリアリティを与えている,重要な基本システムである。
それぞれ「パワードール1」(上)と「パワードール for Win 3.1/95」(下)における,ゲームスタート時点のヤオ・フェイルン海軍少佐。原画を生かしたグラフィックスのリファインぶりも一つの見どころだが,ここでは能力パラメータの分類方法の違いに注目してほしい
ちなみに初代「パワードール」の画面は,こんな感じのトップビュー(直上視点)だった
「パワードール」と「パワードール1」の話に戻ろう。リファインされたグラフィックス要素の数々は,原稿に添えた画像で順次ご覧いただくとして,ここでは戦闘に大きく関わってくる,ルールの変更部分を説明したい。そもそも初代「パワードール」において,パイロットの能力は−7〜+7のステータス数値(ゲーム内用語では補正値)で表現されていた。数字は大きければ大きいほど優秀で,例えば対地攻撃補正の値が高いパイロットは,戦車や偵察車両,敵パワーローダーを撃ったときの命中率が高くなるといった具合で,これによって各パイロットの個性と,戦いを通した成長ぶりが表されていたのである。
それに対して「パワードール1」では,「パワードール2」以降で確立された,スキルとステータスの2本立てからなる能力表現に変更された。スキルとステータスでどこが違うかというと,スキルは戦闘を通じて学べるものではなく,各隊員が持っているか持っていないかがすべてとなっていて,成長段階も存在しない。つまり,索敵/通信/工兵/隠蔽の四分野については,明確に専門技術と見なされているのである。
その一方で対地攻撃や対空攻撃,白兵戦や防御といった能力はステータス扱いのまま,従来どおり成長する能力値となっている。
ミッションブリーフィング画面における,ハーディ・ニューランド中佐とヤオ・フェイルン少佐。ヤオ姉さんはこの時点で,副隊長格の役割を務めるようになっている?
ミッションブリーフィングでの作戦説明と,具体的な作戦立案画面。初代「パワードール」のプランA/Bという選択ではなく,「パワードール2」以降と同じく,必要な枠に人員を割り振って,任務や進入方法,行動時間帯を個別に選択する形となっている
この変更によって各隊員の役割分担が,より重要になった。だがそれを,単純に制約が増えて窮屈になったと考えるのは誤りだ。というのも,各隊員が専門技能を効率よく担当することで,部隊全体の行動としては逆に自由度が増しているからだ。そのカギはこの節の冒頭で述べたAP(アクションポイント)にある。