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ところで、「火星計画」では、テラフォーミングという、都市開発とは別のプロジェクトが同時に進行しています。
火星の地下の氷を溶かし、大地を潤し、温室効果ガスで気温を上げ、そして呼吸可能な大気への改良。 テラフォーミングは、惑星を地球と同じような環境に改造する、千年がかりの壮大な計画なのです。
やがて火星には小さな海ができるでしょう。 そしてその火星の海の水位は、テラフォーミングの進行に伴ってだんだんと上昇していきます。 もし、将来海となる地域に都市があったら‥‥いずれその都市は、海底に沈んでしまうのです。
ところがここで一つの決断が必要になります。 もし、将来海底となる地域に、大鉱脈を見つけたとしたら‥‥?
火星に初めての海はヘラス盆地にできた。 それはまだ、小さな海だが、火星開拓の歴史においては、大きな一歩である。
現実の火星で最初に水をたたえる場所がどこになるかは開発者の選択であり、かならずしもここが選ばれるとは限らない。 が、ヘラス盆地は、適度な狭さと深さを備えており、選択肢の一つとして充分考えられる。
DATA: ヘラス盆地中央部からヘラス海北西部を撮影。 左海岸にわずかに見える高台状の土地はオルフェウス丘陵
順調に広がっているクリュセ海の東端では、巨大なクレーター、カッシーニが水没しようとしている。
カッシーニの直径は415Kmにもおよび、火星のクレーターの中では3番目に大きい。
DATA: カッシーニ環礁をクリュセ海から望む。 手前、環礁上に見える小さなクレーター以外にもいくつかのクレーターの輪郭がうかがえる。
「火星計画」では海の広がりを標高で一律に扱っているが実際にはジオイド面を考慮しなければならない。 さらに海以外にも標高に関りなく盆地などに湖ができる。 もちろん河川なども生まれるだろう。 ここ、アルシア山々頂にも、大きなカルデラ湖ができている。
さて、実はアルシア山々頂のカルデラ湖の存在に関して、興味深い二つの疑問がある。
ひとつは、将来の火星においてアルシア山々頂に雨が降るのか?ということ。
というのも、ここは現在の火星では大気圏外なのである。
「火星計画」の世界では、この時代、テラフォーミングにより現在の数倍の厚さの大気が火星に存在するのであろう。
もうひとつの疑問は、このアルシア山が2万メートルクラスの高山だということ。
地球最高峰のチョモランマ(エベレスト)
の2倍以上の高度での湖は完全に凍り付いているのではないかということである。
DATA: タルシス三山のひとつアルシア山々頂にできたカルデラ湖を南西上空から撮影。 画面奥に見える山は、タルシス三山中央のパボニス山。
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